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『ボクはやっと認知症のことがわかった』を読んで

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長谷川式スケールを作った老年精神科医の長谷川和夫氏が、自ら認知症と告白してつづった『ボクはやっと認知症のことがわかった』を読んだ。

 

医師として認知症の診断を行ってきたが、実際に自分がなってみてはじめて認知症のことがわかったという内容だ。

 

長谷川氏が認知症を告白した気持ち、認知症の概要や歴史、長谷川式スケールを作った苦労などがつづってあり、医療における認知症の黎明期の雰囲気が伝わってくる内容となっていた。かつては「痴呆」と言われていたことや、認知症の人と出会って受けた影響など、認知症を取り巻く環境がこの50年でずいぶん変わってきたことがうかがえた。

 

長谷川式スケールは失礼な質問もあることにも言及されていて、

検査を行なうにあたって、ぜひ注意していただきたいことがあります。「お願いする」という姿勢を忘れないでいてほしいということです。

認知症の人への気遣いを見せられている。

 

一方で、症状を抑制する薬として「アリセプト」の治験総括医師を務められたということだが、アリセプトには副作用も多く、フランスでは保険適用を外された薬でもある。医師の長尾和弘氏は「認知症の薬をやめると認知症がよくなる人がいるって本当ですか?」などの書籍できちんと評価しないで抗認知症薬を飲み続ける危険を指摘している。

 

認知症になった著者が半生を振り返るという内容だったが、認知症介護についてはあまり触れられていないので、そこは事前に知っておいたほうがいいし、そういう意味で帯の「認知症のすべてがここにある」は偽りなので、注意。

 

一生懸命、認知症と向き合ってこられた長谷川氏に敬意を抱くとともに、こんな風に認知症を隠さないで、そのままで社会に参加できる時代が来れば、もっと長生きが楽しくなるだろうと思った。そんな未来に一歩踏み出すような勇気がもらえる一冊だった。