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ユマニチュードの可能性を信じる

フランス生まれのケア技術「ユマニチュード」の特集があったので見てみた。

 

ユマニチュードとは、イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんの二人が作ったケア技法で、日本で話題になるときは、ひどい認知症の方の対応が紹介されることが多い。

 

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攻撃的で介護の難しい認知症高齢者があっという間に柔和な笑みを見せるところを見ると、まさに魔法のようだ。
ジネスト氏によると、ユマニチュードの基本になるのは「見る」「触れる」「話す」「立つ」という四つの柱であり、これをきちんと行うことで信頼関係を構築できるという。

 

自分から相手の視線を捉えにいく、心地よく触れる、目を見て話すなどちょっとした工夫でケアの質が俄然変わってくる。

 

私は理学療法士なので、ケアに「立つ」を取り入れたところに非常に感銘を受けた。
デイサービスで、車いすの利用者が「立って歩きたい」という希望があると、介助して平行棒で歩いてもらうことがある。たったの2~3歩だけで、その人の目に生気がよみがえってくるのが分かる。別人のような明るい表情になる。人間はやはり立って歩く生き物なのだと確信できる瞬間でもある。


考えてみると、人間は生まれてから誰からも教わらずに自然に立つ。人間が進化の過程で生き残りのために獲得した能力が二足歩行だ。つまり、人間は立って歩く生き物ということができるのではないか。それほど「立つ」ことは大切なことなのだ。

 

ただ、最近ではユマニチュードのサイトなどを見ても「立つ」ことが、ちょっと脇にやられている感じがして個人的には残念である。もちろん、車いすの人を立たせるのは誰でもできることではないし、人手もいるので、基本に据えるのは難しいだろう。だが「立つ」ことを強調したのはユマニチュードの発明だと私は思っている。

 

ユマニチュードは、ローマ字で書くと「Humanitude」だ。「Human(人間)」を重視したケアということである。相手をきちんと人間として尊重する。それが基本だしそれに尽きるかもしれない。
なんだか当たり前のことなんだけど、逆に言えば、人間として扱ってもらえない人がそれなりにいるということだろう。残念なことだが。

 

動画の通りに現場でユマニチュードを実践するのは、人手も時間もかかるし、難しいのかもしれない。
ただ少なくとも、「相手を人間として尊重する」という態度、あるいは姿勢は持つことはできるのではないだろうか。
通りすがりにちょっと微笑む、挨拶する、気遣うなど、探してみればできることはあるはずだ。些細なことに思えても「あなたを尊重します」という心をもって接すれば、どんな認知症の人でも何かが伝わるのではないかと私は信じている。